2024.08.22
相談員ブログ
ポリファーマシーについて
【ポリファーマシーとは】ポリファーマシーとは多種類の薬の服用により、副作用などの有害事象につながる可能性がある状態のことです。
「poly(複数)」と「pharmacy(調剤)」を合わせた造語です。
単に服用薬の数が多い状況を指すのではなく、多剤服用をすることで起こる薬物有害事象や、薬の飲み忘れや飲み間違いなどで起こるさまざまな問題をさしています。
また、残薬や重複投与、不必要な薬が処方されているケースなどもポリファーマシーに含まれます。
「何種類以上の薬を服用していたらポリファーマシーか」という具体的な定義はないのですが、有害事象が発生するリスクが高まるといわれる5~6種類以上の薬を併用している場合にポリファーマシーとされることが一般的です。
厚生労働省の調べによると、65歳以上の約14%、75歳以上の約25%の人に6種類以上の薬が処方されています。
しかしながら、6種類以下で薬物の有害事象が起こるケースもあります。
服用されている薬の数を基準に判断するのではなく、安全性や有効性の観点から服用薬を確認することが大切です。
【ポリファーマシーの原因】
・複数の慢性疾患の治療
身体に不具合や症状が出るたびに、新たな医療機関や診療科を受診することがあります。
高齢者は複数の医療機関や診療科を受診している場合が多く、その結果服用薬の種類が増えてしまうことがあります。
・処方カスケード
処方カスケードとは、服用している薬による有害な反応が新たな病状と誤認され、それに対して新たな処方が生まれる現象です。
次々と連なるように処方される様子を「小さな連なる滝」を意味する「カスケード」という言葉で表しています。
・加齢による身体機能の低下
高齢者は薬の副作用が出やすく重症化しやすいといわれています。
それは歳をとることで、薬の作用の仕方が違ってくることも関係しているからです。
薬は服用されて目的を果たした後は、肝臓で分解されたり、腎臓から排出されますが、肝臓や腎臓の機能は加齢により低下します。
そのため、高齢者は薬を処理するのに時間がかかったり、薬の作用が強くなり過ぎて身体に有害な影響を与えることがあります。
薬が多くなれば肝臓や腎臓に負担が増しますが、これらの事象が生じることもポリファーマシーが原因です。
【ポリファーマシーの症状】
高齢者が多数の薬の服用で起きる主要な有害事象は以下のようなことが挙げられます。
・意識障害
起こそうとしても目を覚まさない、起きているのに反応が鈍い、すぐに寝てしまうなどの症状が典型的です。
・低血糖
血糖が急激に低下することで、手や指の震え、動悸、頻脈、発汗などが生じます。
・肝機能障害
食欲の減退、足のむくみ、お腹の張りに加え、疲労が回復しない、体を動かすとつらいといった症状がよくみられます。
・ふらつきや転倒
常用薬を5剤以上服用している人は転倒の危険性が1.3倍高まるとの研究結果もあります。
高齢になると骨がもろくなるので、転倒による骨折をきっかけに寝たきりになり、さらに寝たきりから認知症を発症する負の連鎖につながる可能性もあります。
【ポリファーマシーの予防と対策】
・お薬手帳を活用する
医療機関を受診する時や薬局に行く時は、必ずお薬手帳を持参しましょう。
服用している薬について医師や薬剤師に正確な情報を伝えることができます。
お薬手帳は病院や薬局ごとに分けずに、1冊にまとめておきましょう。
・かかりつけの薬局や薬剤師をもつ
普段からかかりつけの薬局や薬剤師を持ち、処方されている薬の情報を把握してもらいましょう。
処方箋以外にも、市販薬やサプリメントなど普段使っているものがあれば、それも伝えましょう。
・気になる症状は医師・薬剤師に相談
薬を飲んでいて違和感を感じた時は、勝手に薬をやめたり減らしたりせず、かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。
その際には、いつごろからどのような症状が出てきたのか、気になる症状をメモしておくと相談しやすくなります。