2024.10.02
相談員ブログ
高齢者と便秘について
【高齢者と便秘】厚生労働省の「2022年国民生活基礎調査」によると、65歳以上の高齢者で便秘だと自覚症状がある人は、全年齢(3.6%)の約2倍である7.1%となっています。
便秘は女性が多いというイメージがありますが、65歳以上になると男性も6.8%の人が便秘を訴えていて、女性の7.4%と近い数になります。
便秘を疑ってみる基準は、「3日以上排便が無い状態、または毎日排便があっても残便感や膨満感がある状態」(日本内科学会の定義)とされています。
便秘は、身体的・精神的に生活の質を低下させ、日常生活の活動にも支障をきたす可能性があります。
【高齢者の便秘の原因】
・食事量の減少
若い頃に比べると食事の量が減少してくるため、大腸の活動や機能が低下して、便が大腸にとどまりやすくなってしまいます。
・喉の渇きを感じにくく、水分も不足しがち
加齢によって喉の渇きを感じる機能が低下してしまうので、水分摂取量の減少に伴い便の水分も減ってしまうため硬くなり、便秘がちになってしまいます。
・腸の働きの低下(弛緩性便秘)
加齢に伴って腸が伸び縮みするぜん動運動が低下し、便が腸にとどまる時間が長くなることにより、便が硬くなり排出されづらくなります。
・便を押し出す力の低下
排便する時に必要な腹筋や肛門括約筋が弱くなり、便を押し出しにくくなっています。
・運動量の減少
運動量の減少は体力の減少にも影響しますが、大腸のぜん動運動の低下も招きます。
・便意を感じにくくなる。
大便が直腸に達すると、直腸が感知して大脳を刺激し便意を感じるものですが、加齢とともに直腸の知覚が低下して便意を感じにくくなる場合があります。
・薬剤による副作用(薬剤性便秘)
薬の副作用によって便秘になることがあります。
例えば抗コリン作用のある薬(咳止め、頻尿、喘息、うつ病など)では便秘が起こりがちです。
高血圧の薬や、鉄剤なども便秘につながるものがあります。
【高齢者が便秘になることによる危険性】
・血圧上昇による疾患の誘発
硬い便を出すためにいきむことで血圧が急上昇し、クモ膜下出血や動脈瘤の破裂を引き起こす可能性があります。
・他の疾患の誘発
慢性便秘症の方は、大腸がんや心血管疾患、慢性腎臓病などの病気のリスクを高めるという研究報告があります。
・腸内環境の悪化
便秘が慢性化すると、腸内の有害物質が溜まることで腸内環境が悪化し、肥満や生活習慣病につながる原因となります。
・腸閉塞のリスク
便秘の長期化により、便が腸内に詰まって腸閉塞を引き起こすことがあります。
腸閉塞になると、手術が必要とされる場合もあります。
・腸のバリア機能の低下
便が長く腸に停滞すると、腸のバリア機能の低下が起こり、炎症や感染症、栄養不足をきたすリスクが高まります。
・痔・裂肛
便が硬くなることにより排便困難になると、肛門周辺の組織に負荷がかかり、痔や裂肛になってしまうことがあります。
・精神的苦痛
腸が動かないことで身体的な影響と共に、イライラや不安がつのるなど精神的苦痛も生じてきます。
【便秘の対策】
・腸内環境を整える
腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えるために、酪酸菌や乳酸菌などの善玉菌を含む食品や善玉菌のエサとなる食物繊維などをバランスよく摂取しましょう。
・きちんと食事をとる
1日のうち胃腸が最も活動するのは朝です。
朝食をしっかり食べることで、大腸のぜん動運動が刺激され、便通につながります。
・水分摂取を心掛ける
加齢に伴い喉の渇きを感じにくくなってくるので、こまめに水分を摂りましょう。
脱水予防だけではなく、便の柔らかさを保つためにも大切です。
起床時に冷水や冷たい牛乳を飲むと、腸が刺激されて排便を促します。
・適度な運動をする
腸に刺激を与える適度な運動が有効です。運動の後に休憩すると副交感神経の働きが高まり、腸の動きが活発になります。
腹部のマッサージも効果的です。
・トイレタイムを決める
排便の規則性を整えることは重要です。たとえ便意が無くても定時にトイレに行き排便習慣をつくります。
便意を我慢すると、便秘の原因になるので、便意を感じたら、すぐにトイレに行くようにしましょう。