2024.11.05
相談員ブログ
高齢者と睡眠について
【高齢者の睡眠の特徴】加齢とともに睡眠にも変化が現れます。
健康な高齢者でも、若い頃とは異なる睡眠状態になります。
また睡眠を妨げる心身の病気にかかると、様々な睡眠障害が出現します。
高齢者の睡眠として下記のような特徴がみられます。
①早寝早起きになる
体内時計の加齢変化により、睡眠を支える生体機能リズム(血圧、体温、ホルモン等)が前倒しになることで早寝早起きになります。
②深い睡眠が減少する
高齢者の睡眠脳波を調べると、深いノンレム睡眠が減少して浅いノンレム睡眠が増加するようになります。
そのために尿意や小さな物音でも、覚醒してしまうようになります。
③睡眠時間が減少する
加齢とともに基礎代謝が低下したり、社会活動から遠ざかることで、心身ともに日中の活動量が低下します。それらのことから必要とする睡眠時間が減少すると考えられています。
④寝床にいる時間が長くなる
睡眠時間が短くなっているのに、「もっと寝なくては」とか「やることがないから」と寝床にいる時間が長くなる傾向があります。
そのことが、中途覚醒や熟睡感の低下にもつながってしまいます。
【睡眠障害の種類】
高齢者にみられる代表的な睡眠障害について、下記のようなことが挙げられます。
・不眠症
入眠困難、中途覚醒、早期覚醒などから、日中の眠気や抑うつ状態が生じます。
また、慢性的に不眠があると、認知機能にも影響が出ることがあります。
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠中に呼吸が止まると覚醒反応を生じ、日中の強い眠気や集中力の低下がみられます。
心筋梗塞、脳梗塞などの心血管系疾患の発症リスクが高まるので注意が必要です。
・レストレッグス症候群(むずむず脚症候群)
脳内の神経伝達物質ドーパミンの働きが低下することで発症し、脚の異常感覚(脚がむずむずしたり、虫が這う感覚、突っ張り感や痛み)により不眠が生じます。
・周期性四肢運動
睡眠時に足首や足の親指が反り、膝が曲がるなどの反復が何回もみられ、不眠になってしまいます。
主に足の動きに起こることが多いのですが、手の動きに症状が現れることもあります。
・レム睡眠行動障害
睡眠中に夢で見たことが大声の寝言や身体の異常行動として反映されます。
パーキンソン病やレビー小体型認知症、多系統萎縮症との関連が疑われます。
・概日リズム睡眠障害
昼夜のサイクルと体内リズムが合わないため、1日の中で自ら望む時間帯に睡眠をとることができず、日常生活に支障をきたす障害です。
【不眠対策】
不眠に対して薬物治療で対処することがありますが、生活習慣を見直してみる必要もあります。
良質な睡眠のために以下のようなことが挙げられます。
①毎朝同じ時間に起きて、朝の日光を浴びる
日光を浴びることで、体内時計がリセットされるため、夜になると眠くなる「睡眠リズム」が整ってきます。
②夕方以降にカフェインを摂取しない
覚醒作用があるカフェインを摂取することで、寝つきが悪くなり、睡眠の質も低下してしまいます。
③液晶画面は就寝の1時間前まで
ブルーライトなどは脳に刺激を与えてしまうので、スムーズな入眠を妨げてしまいます。
④就寝前の喫煙をしない
ニコチンにも覚醒作用があるため、喫煙は睡眠に悪影響を与えます。
⑤昼寝は15時前で30分以内に
日中20~30分なら脳を休ませて良いのですが、それ以上になると夜間の睡眠を妨げることになります。
⑥就寝の2~3時間前の入浴
深部体温を一時的に高めて、下がってくると眠気が誘発されます。
⑦寝酒・深酒は不眠のもと
睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を妨げ、夜中に目覚める原因となります。
【認知症の睡眠問題】
認知症になると、体内時計を調節している神経系の変化が生じることや、日中の活動量が減少し日光に当たる時間が減少するために、睡眠リズムが障害されます。
アルツハイマー型認知症では、夜間のメラトニン分泌が減少し、睡眠と覚醒のサイクルの振幅が低下することが知られています。
その結果、夜間の不眠とともに午睡が増え、昼夜逆転の不規則な睡眠・覚醒リズムに陥ることがあります。
また、十分に覚醒せずにせん妄状態がしばしば出現します。