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2025.01.08
相談員ブログ

アルコール依存症について

【アルコール依存症とは】
アルコール依存症とは、お酒の飲み方(飲酒量、飲むタイミング、飲む状況)を自分自身でコントロールできなくなった状態を指します。
その影響は精神面にも身体面にも及び、社会生活や家庭に大きな支障をきたしてしまいます。
また、アルコールが抜けると、神経過敏になったり、不眠、頭痛、吐き気、下痢、手の震え、発汗、幻視、幻聴などの「離脱症状」(禁断症状)が現れるため、それを抑えるために再びアルコールを摂取してしまいます。
アルコール依存症は本人が認めない傾向があり、「否認の病」とも言われています。
一旦やめられたとしても、その後に少しでも飲むと再び依存状態に戻ってしまうため、強い意志で断酒する必要があります。
健康な生活のための1日の平均飲酒量は男性は2ドリンク、女性と高齢者は1ドリンクとされ、以下のような目安があります。(1ドリンクは純アルコール換算で10g)
ビール:男性500㎖ 女性・高齢者250㎖
日本酒:男性1合弱 女性・高齢者1/2合弱
焼酎 :男性100㎖ 女性・高齢者50㎖
ワイン:男性200㎖ 女性・高齢者100㎖
ウイスキー:男性60㎖ 女性・高齢者30㎖
1日の平均飲酒量が6ドリンク超えると多量飲酒とみなされ、アルコール依存症のリスクが高まるとされています。

【アルコール依存症の検査方法と診断】
WHOが作成したスクリーニングテスト「AUDIT-C」や、依存症の診断基準「ICD-10 」を使用して、診断を行います。
AUDIT-Cでアルコール依存症が疑われる場合はICD-10 を用いて正式な診断を行います。

[AUDIT-C]
3つの質問の回答点数を合計して男性は5点以上、女性は4点以上でアルコール依存症が疑われます。

①アルコール含有飲料をどのくらいの頻度で飲みますか?
0点:飲まない 1点:1か月に1度以下 2点:1か月に2~4回 3点:1週に2~3度 4点:1週に4度以上

②飲酒する時には通常どのくらいの量を飲みますか?
0点:1~2ドリンク 1点:3~4ドリンク 2点:5~6ドリンク 3点:7~8ドリンク 4点:10ドリンク以上

③1度に6ドリンク以上飲酒することがどのくらいの頻度でありますか?
0点:ない 1点:1か月に1度未満 2点:1か月に1度 3点:1週に1度 4点:毎日あるいはほぼ毎日

[ICD-10 ]
過去1年間に、以下の6項目のうち3項目以上を同時に1か月以上経験するか、繰り返し経験した場合はアルコール依存症と診断されます。

①激しい飲酒渇望
②飲酒行動の抑制喪失
③離脱症状
④耐性の増大
⑤飲酒中心の生活
⑥有害な結果が起きていても、関わらず飲酒

【アルコール依存症の進行ステージ】
[依存症との境界線]
・ステージ1;飲酒量の増加と耐性の形成
習慣的な飲酒を継続すると耐性ができてしまい、以前と同じ飲酒量では酔わなくなります。
不眠やストレスを解消しようとして、飲酒量が増加してしまう人もいます。

・ステージ2:ブラックアウト
飲酒して記憶を喪失することを「ブラックアウト」といいます。
ブラックアウトが頻繁に起こる場合は、アルコール依存症の初期症状とみなされるため注意が必要です。

[依存症初期]
・ステージ3:精神依存
飲酒が生活の中心となり、強い飲酒願望を抑えられなくなり、飲酒の制御ができなくなります。
この状態が「精神依存」で、重篤化すると飲酒のことばかり考え、他のことへの関心が薄れてしまいます。

[依存中期]
・ステージ4:身体依存
飲酒をやめたり減量すると、発汗、震え、不安、焦燥感などの「離脱症状」が現れます。
この状態が「身体依存」で、離脱症状を抑えるために飲酒を繰り返すという負のループに陥ってしまいます。

[依存症後期]
飲酒により、社会生活や家庭生活が困難な状況に陥ります。
食事を摂らずに飲酒を続け、生命を維持するのに危険な状態になります。

【アルコール依存症がもたらす問題】
アルコール依存症に関連して、健康問題や、社会問題、家族問題が深刻さを増します。
下記のようなことが生じてくるので、早期の段階で医師に相談することが大切です。

[健康問題]
・早期
肝機能異常、高血圧、抑うつ、不安感
・後期
肝硬変、不整脈、がん、慢性膵炎、認知症、パニック障害、不安障害

[社会的問題]
・早期
遅刻、病欠、集中力の低下、適応力の低下
・後期
暴力、事故、怪我、失業

[家庭問題]
・早期
家庭内不和、子どもへの異常な関り、責任の放棄
・後期
配偶者及び子どもへの暴言や暴力、育児放棄、離婚、親権の喪失

【高齢者のアルコール依存症の特徴】
高齢者のアルコール依存症は年々増加していて、全国54か所の専門治療施設に入院した男性患者の4人に1人が60歳以上であることが報告されています。
加齢に伴い、下記のような理由が増加の原因と考えられています。

・警戒意識の欠如
定年退職後に自由な時間を持て余して不摂生になったり、家族の関心度の欠如がアルコール依存症への警戒意識を希薄にしてしまいます。

・孤独感の増大
家族や知人との死別、子どもの独立、生きがいの喪失、孤立感など、高齢者特有の心理が飲酒問題の原因となることも少なくありません。

・身体能力の低下
肝機能の低下や胃の粘膜の萎縮、体内の水分量の減少により、アルコール血中濃度が高くなります。
そのため、少量の飲酒でも酩酊状態になり、アルコール依存症になるリスクが高まります。

・認知症との合併
アルコール依存症で治療入院している人の中で、60歳以上では18%に認知症の疑いがあり、25%に軽度認知障害が見られています。
長年のアルコール摂取により脳がダメージを受け、脳の萎縮が進行することが関係していると考えられています。

・転倒リスクの増加
体力的な衰えがある状態で飲酒すると、転倒しやすくなります。

【アルコール依存症の治療方法】
アルコール依存症の治療は「断酒」が原則ですが、下記のような治療方法があります。

[受診]
アルコール依存症の専門外来に通院して、カウンセリングを受けながら減酒や断酒に取組みます。

[心理社会的治療]
・集団精神療法
断酒会、AA(匿名のアルコール依存症患者の会)など複数の患者が集まり、飲酒問題の適切な考え方を身に付けていきます。

・認知行動療法
アルコール依存症の人は、自身の飲酒問題を過小評価したり、正当化することがあります。
飲酒に対する考え方や捉え方を改めることにより、行動や生活習慣の改善を目標とします。

・コーピングスキルトレーニング
飲酒に関係する状況や、ストレスなどに対して、適切な対処(コーピング)を考えて、その練習をすることで、再飲酒を避けるようにします。

[薬物療法]
離脱症状に対して、抗不安剤、抗精神薬などの薬物療法を行います。
また、断酒継続を目標に抗酒薬による薬物療法を行います。
抗酒薬は体内のアルコール分解を抑制して、有毒なアセトアルデヒドの状態に留めて不快な症状を引き起こし、アルコール摂取から遠ざけます。
また、脳内に作用して飲酒欲求を軽減する薬もあります。
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