2025.03.05
相談員ブログ
変形性膝関節症について
【変形性膝関節症とは】変形性膝関節症(膝OAとも呼ばれます)とは関節のクッションである軟骨が、加齢や筋肉量の低下などにより、長い年月をかけて少しずつすり減ることで、関節の変形や痛みなどの症状が徐々に出現する病気です。
一度すり減った軟骨は自然に治ることはありません。
軟骨がすり減った分、膝関節の骨と骨の隙間が狭くなって内側の骨が露出してきて、骨のへりにトゲのような突起物(骨棘:こつきょく)ができたり、骨が変形したりします。
また関節を覆っている関節包と呼ばれる繊維膜の内側に炎症が生じるため、黄色味がかった液体が分泌され、いわゆる「膝に水が溜まった」状態になります。
男女比は1:4で女性に多くみられ、50~60歳代の年齢に多く発症します。
【変形性膝関節症の症状】
変形性膝関節症の主な症状としては、膝を動かしたときに生じる痛みです。
この症状は「動作時痛」と呼ばれます。
以下のように、動作時痛は段階を追って進行していきます。
[初期]
膝を使った動作の開始時に痛みが生じます。
立ち上がった瞬間や歩き始めると、膝がこわばったり、鈍い痛みを感じるなどの自覚症状が現れます。
また、長時間の歩行後に膝関節の痛みが出ることもあります。
[中期]
膝の痛みが治まりにくくなり、正座や深いしゃがみ込み、階段昇降が辛くなります。
膝の変形が目立つO脚になったり、膝関節内の軟骨や骨がすり減って、歩行時に関節がきしむ音がしたり、足をついた時に痛みが発生することがあります。
[末期]
関節軟骨がほとんどなくなり、骨同士が直接ぶつかるようになります。
夜間痛(痛みで眠れない)や安静時痛(何もしなくても痛い)が生じます。
また膝関節の変形が目立ち、膝関節の曲げ伸ばしが難しくなり、歩行が困難になります。
日常生活にも支障をきたし、行動範囲が狭まるため、精神的な苦痛も大きくなります。
【変形性膝関節症の原因】
変形性膝関節症の原因には、明確な原因が特定できない「一次性」のものと、膝関節周囲の怪我や病気が影響している「二次性」のものがあります。
多くの場合は一次性のものですが、二次性のものは半月板損傷や靭帯損傷、捻挫や骨折といった過去の外傷や、関節リウマチなどの病気によって発症する場合があります。
一次性は50~60歳代の発症が多いことから、老化が主な要因の一つではないかと考えられています。
次に影響が大きいと考えられるのは、関節への負担を軽減している膝周りの筋力低下や、膝への荷重が大きくなる肥満などです。
他にも膝に負担の大きいスポーツをしてきた人や、先天的要因、O脚などの要素が複合的に関与し、変形性膝関節症の発症と関係しています。
女性が変形性膝関節症に多い理由として、以下の2点が挙げられます。
①女性ホルモンの減少
軟骨の形成には女性ホルモン、特にエストロゲンの働きが必要とされています。
女性は閉経を迎えるとエストロゲンの分泌量が極端に減少しますが、これによって変形性膝関節症になりやすくなってしまうと考えられています。
②筋肉量が少ない
女性は男性と比較すると膝の筋肉量が少ないため、より軟骨への負担が大きくなり、すり減りやすい状態にあります。
【変形性膝関節症の治療法】
変形性膝関節症の治療法は大きく「保存療法」と「手術療法」の2種類に分かれます。
[保存療法]
保存療法には、「運動療法」「薬物療法」「温熱療法」「装具療法」などがあります。
・運動療法
膝の痛みから歩くことを避けがちになる人もいますが、定期的な有酸素運動や筋力強化訓練、関節可動域訓練を継続的に行うことが痛みの軽減や日常生活動作の改善に有効です。
・薬物療法
薬物療法は、「内服薬」「外用薬」「注射薬」があります。
これらを組み合わせて痛みを抑え、炎症を鎮めることで症状を緩和します。
・温熱療法
温熱パックを用いて痛みの緩和を促します。
皮膚の表面から痛みを感じない程度の電流を流して刺激を与える「経皮的電気刺激療法」などを行うことがあります。
・装具療法
その人の状態に応じた装具を選びます。片側の膝が痛む場合には反対側の手で杖を持ち、両側の膝が痛む場合は車輪付きの歩行器などを使用します。
足裏にかかる負担軽減のために足底板を使用したり、膝関節装具を装着することもあります。
[手術療法]
保存療法で改善されない場合や、痛みが強く日常生活に支障をきたす場合は、手術療法を検討します。
手術には、「関節鏡視下手術」「高位脛骨骨切り術」「人工関節置換術」があります。
・関節鏡視下手術
変形性膝関節症の初期症状の緩和に有効とされています。
膝に小さな穴を開け、関節内にカメラを挿入して患部の状態を確認しながら、傷ついた半月板や炎症を生じている組織、骨棘などを取り除きます。
・高位脛骨骨切り術
軟骨がある程度残っている初期から中期序盤に適した手術とされています。
膝の骨の一部を切ることで骨の軸(角度)を調節し、痛みを引き起こしている原因を取り除きます。
・人工関節置換術
変性膝関節症が進行した、中期から末期に至った場合の選択肢となる手術です。
痛みやこわばりの原因となっている軟骨や骨の表面を削り、人工膝関節に入れ替えることで症状を改善する、最終的な治療法です。