2025.07.01
相談員ブログ
「訪問入浴介護」と「訪問介護による入浴介助」について
【自宅での入浴を支える介護サービス】年齢を重ねたり、病気や障がいによって身体の動きが制限されると、自宅での入浴が難しくなることがあります。入浴は身体を清潔に保つだけでなく、心身のリフレッシュにもつながる重要な行為です。そのため、自宅での入浴を安全に行うための支援が必要になることがあります。
そうした場合に利用できるサービスとして、「訪問入浴介護」と「訪問介護による入浴介助」があります。どちらも介護保険制度に基づいた在宅サービスですが、内容や対象となる方の状態には違いがあります。
それぞれのサービスの特徴や違い、また訪問入浴に同行する看護師の役割について紹介します。
【訪問入浴介護とは】
訪問入浴介護は、寝たきりの方やそれに近い状態の方を対象に、自宅での入浴を支援するサービスです。専用の簡易浴槽を自宅の室内に設置し、ポンプでお湯を循環させながら入浴を行います。
このサービスは、看護師1名と介護職員2名の計3名がチームで訪問し、入浴前後の健康チェックや介助を行います。入浴の前には体温・血圧・脈拍などのバイタルサインを測定し、その日の体調によって入浴が可能かどうかを判断します。入浴中も利用者の状態を観察し、必要に応じて対応します。
【訪問介護における入浴介助とは】
訪問介護による入浴介助は、自宅の浴室を使用し、ホームヘルパーが入浴動作を支援するサービスです。ある程度の立ち上がりや移動が可能な方が対象となり、1名の介護職員が訪問して入浴をサポートします。
このサービスでは、看護師の同行はなく、医療的な観察や判断は行いません。浴室内での転倒予防や身体の支えが中心となります。
【訪問入浴と訪問介護の違い】
両サービスには、いくつかの明確な違いがあります。
まず、使用する浴槽が異なります。訪問入浴では、スタッフが専用の簡易浴槽を持参して設置しますが、訪問介護では自宅にある浴槽を使用します。
また、訪問するスタッフの体制も異なります。訪問入浴は、看護師1名と介護職員2名の計3名で訪問しますが、訪問介護の入浴介助は介護職員1名で行われます。
医療的な見守りの有無も大きな違いです。訪問入浴では、看護師が体調をチェックし、入浴中も状態を観察します。
訪問介護では、医療的判断は行わず、主に介助や見守りを中心とした支援となります。
対象となる方の状態にも違いがあります。訪問入浴は、寝たきりの方や医療的な配慮が必要な方に適しており、訪問介護の入浴介助は、ある程度身体を動かせる方に適しています。
【訪問入浴での看護師の役割】
訪問入浴では、必ず看護師が同行し、入浴前後の体調確認を行います。体温・血圧・脈拍などを測定し、その日の入浴が安全かどうかを判断します。入浴中も呼吸状態や皮膚の様子を観察し、異常が認められた場合には、すぐに中止することもあります。
また、褥瘡や皮膚の状態を確認するなど、医療的な視点での観察も行います。ただし、訪問入浴はあくまでも介護保険サービスの一環であるため、看護師による医療行為は原則として行われません。
身体を洗う、髪を洗うといった入浴そのものの介助は介護職員が担当します。看護師は入浴の可否の判断や体調の見守りを主に担います。
【どちらのサービスを選べばよいか】
「自分で動くのが難しい」「持病があるので入浴中の体調変化が不安」といった方には、看護師が同行する訪問入浴が適しています。
一方、「浴室まで移動できる」「体を洗うときに少し支えてもらえれば大丈夫」といった方には、訪問介護による入浴介助が適した選択肢となります。
どちらかのサービスが適しているか判断に迷う場合は、ケアマネジャーに相談すると安心です。利用者の身体状況や生活環境に応じて、適切なサービスを提案してもらえます。
【まとめ】
入浴は、身体の清潔を保つだけではなく、生活の質(QOL)を高める重要な日常生活行為のひとつです。身体が思うように動かない状態でも、適切な支援を受けることで、自宅での入浴を継続することが可能になります。
訪問入浴と訪問介護の入浴支援には、それぞれ異なる特長と役割があります。どちらがより適しているかは、利用者ご本人の状態や環境に応じて判断することが大切です。
介護保険制度を上手に活用しながら、安心して自宅での生活を続けていくためにも、必要な支援を取り入れていきましょう。