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2025.10.02
相談員ブログ

無届老人ホームについて

【無届老人ホームとは】
「無届(未届)老人ホーム」とは、老人福祉法等が想定する届出・登録の手続きを行っていない高齢者向けの住居・施設を指す通称的な呼び方です。法令上の正式な言葉ではありませんが、行政に届出を出していない、あるいは届出の対象に該当すると判断されるにもかかわらず届出を行っていない施設がこのように呼ばれます。全国に多様な形態が存在し、正確な件数は把握が難しいものの、低料金や初期費用不要といった事情から生活困窮者の受け皿になっているケースがあることが指摘されています。

【無届と届出施設の法的違い】
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは、老人福祉法や介護保険法、高齢者の居住の安定確保に関する法律(通称:高齢者住まい法)などに基づき、都道府県への届出・登録や各種基準への適合が求められます。これらは建物の構造、防災設備(スプリンクラー等)、衛生管理、人員配置、契約書類の整備・説明義務など、入居者保護を目的とした最低限のルールが定められています。一方、届出を行わない施設は行政の監督対象外となるため、改善命令や事業停止命令、あるいは一定の罰則の対象となる場合があります。例えば老人福祉法に基づき違反行為に対しては三十万円以下の罰金等の規定があります(違反の内容や経過によってはさらに重い措置がとられることがあります)。

【背景と存在理由】
無届施設が存在する背景には、特別養護老人ホームなど公的施設の長い期間の入居待機、民間有料施設の高額な初期費用や連帯保証人・身元保証人の条件、認知症や重度の障がいを理由とする入居拒否などがあります。また、制度的に対応が難しい生活困窮者を受け入れるために非正規の受け皿が生まれる側面もあり、行政の受け入れ能力不足という構造的課題が影を落としています。

【主な問題点とリスク】
無届施設では、建築基準法や消防法に基づく基準や防火設備が整備されていない例が散見され、火災時や感染症発生時に重大事故につながるリスクがあります。加えて、衛生管理や介護体制が不十分であること、職員配置が極端に少なく適切なケアが行き届かないなど、入居者の健康・安全が脅かされやすいという問題があります。行政による定期的な監督や指導が届きにくい点もリスクを高める要因です。

【トラブル事例】
代表的な事例として、札幌市の生活困窮者向け共同住宅(‘’そしあるハイム“)での火災事件が社会的な警鐘となりました。老朽化した建物でスプリンクラー等の防火設備が不十分だったことなどから多数の死者が出て、その後、無料低額宿泊所(無低)などの制度的整備や規制強化の議論が進みました。こうした事例は、無届施設の潜在的危険性を示す典型例です。その他、金銭の搾取や介護放棄、面会制限や不当な身体拘束、不透明な高額請求といったトラブル報告も散見されます。

【利用者層と社会的課題】
利用者は低所得者、身寄りのない高齢者、連帯保証人が見つからない人、認知症や障がいのある人など、公的福祉の網から漏れがちな人々が中心です。月額数万円程度で入居できる格安施設もある一方で、逆に契約金を高額に設定するなど利用者の状況を悪化させる事業者も存在します。根本的には受け皿不足と所得格差の問題が絡み合っており、社会的解決が求められます。

【見極め方と施設選びの注意点】
名称だけで判断せず、行政への届出や登録の有無を確認することが重要です。運営法人名や施設名が市区町村・都道府県の公表する施設一覧に掲載されているか、契約書や料金体系が明確に提示されるか、見学時に人員配置や生活支援の具体的内容を確認することを推奨します。届出の有無は、市区町村の窓口(福祉担当)や地域包括支援センター等に問い合わせると確実です。契約前に不安がある場合は弁護士や消費者相談窓口など第三者に相談してください。

【今後の課題】
政府・自治体による規制強化や指導は進んでいるものの、低所得者のための適切な受け皿の不足という根本問題は残っています。超高齢者社会において、誰もが安全に暮らせる公的施設の拡充、生活困窮高齢者への支援強化、民間施設の質の保証を進めることが急務です。利用者・家族も情報収集と慎重な契約や判断を行うことが必要です。
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