2025.12.09
相談員ブログ
胃潰瘍・十二指腸潰瘍について
【胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは】胃潰瘍と十二指腸潰瘍は、どちらも胃酸などの強い消化液によって胃や十二指腸の粘膜が深く損なわれる病気で、まとめて「消化性潰瘍」と呼ばれます。浅い炎症やびらんとは違い、粘膜の奥深くまで組織が欠損(穴が開いたような状態)するのが特徴です。
【発症のしくみ】
胃の中では塩酸やペプシンなどの強い消化液(攻撃因子)が働いていますが、同時に胃粘液や粘膜の血流、再生力など(防御因子)が粘膜を守っています。この「攻撃」と「防御」のバランスが崩れると、粘膜が傷つき、潰瘍ができます。
主な原因は次の通りです。
・ピロリ菌感染:胃にすみつく細菌で、粘膜を傷つけて慢性的な炎症(慢性胃炎)を引き起こします。
・鎮痛薬(NSAIDs):アスピリンやロキソニンなどの一部の鎮痛薬は、胃を守る働きを持つ物質(プロスタグランジン)の生成を抑え、粘膜を弱くします。
・ストレスや生活習慣:不規則な食事、過度の飲酒、喫煙、睡眠不足も潰瘍を悪化させる要因になります。
これらの原因が重なると潰瘍が発症しやすくなります。
【症状の特徴】
主な症状はみぞおちの痛みで、「しくしくする」「焼けるような痛み」と表現されます。
・胃潰瘍:食事中や食後に強く痛むことが多い。
・十二指腸潰瘍:空腹時や夜間・早朝に痛み、食事をすると一時的に楽になる傾向があります。
その他、胃もたれ、胸やけ、げっぷ、吐き気、食欲不振などもみられます。進行すると吐血や黒い便(タール便)が出ることもあり、これは出血しているサインです。
【年代別の傾向】
・胃潰瘍は中高年以降に多く、男性にやや多い傾向があります。
・十二指腸潰瘍は以前は若年層に多くみられましたが、近年は高齢者にも増加しています。
【高齢者に多い特徴】
高齢者では、潰瘍の症状がはっきり出にくいことがあります。痛みを感じにくいまま進行し、吐血や黒色便などの出血症状で初めて気づくことも少なくありません。
また、次のような特徴があります。
・薬剤性潰瘍が多い:鎮痛薬や血液をサラサラにする薬(抗血小板薬、抗凝固薬)を服用している人が多く、これが原因で潰瘍を起こしやすくなります。
・ピロリ菌感染の既往:若い頃の感染が長年の慢性胃炎を経て、加齢後に潰瘍として現れることがあります。
・重症化リスクが高い:加齢により粘膜の修復力が低下し、出血や穿孔(せんこう:穴が開くこと)が起こると回復に時間がかかり、命に関わることもあります。
・無症候性潰瘍:自覚症状が乏しいため、検診や内視鏡で偶然見つかることもあります。そのため、高齢者では、少量の出血による貧血や食欲低下、倦怠感などのわずかな変化にも注意が必要です。
【検査と診断】
診断の中心は内視鏡検査(胃カメラ)で、潰瘍の位置や深さを確認します。同時に潰瘍の主な原因であるピロリ菌の有無を調べる検査も行われます。高齢者では、服用中の薬(薬歴)の確認することがとても重要です。
【治療法】
治療の基本は次の3つです。
①胃酸を抑える薬:PPI(プロトンポンプ阻害薬)やP-CAB(カリウムイオン競合型酸分泌抑制薬)などが使われ、胃酸をしっかり抑えることで、粘膜が回復しやすくなります。これが潰瘍治療の中心です。
②ピロリ菌の除菌治療:ピロリ菌が原因の場合、抗生物質をと胃酸抑制薬を組み合わせて除菌を行います。除菌に成功すれば、再発の可能性が大幅に減ります。
③薬剤調整:潰瘍の原因が鎮痛薬や抗血小板などの場合は、医師が薬の中止や変更、医薬の併用などを検討します。
高齢者では、脱水や栄養状態への配慮を行いながら、体への負担が少ない治療法が選ばれます。
【合併症と注意点】
潰瘍を放置すると、出血や穿孔、通過障害(胃の出口が狭くなり食べ物が通りにくくなる)などの合併症を起こすことがあります。特に高齢者の場合は体力や免疫の低下により、重症化して命に関わることもあります。
【日常生活での注意】
・規則正しい食事を取り、刺激物(香辛料など)を控える。
・喫煙を避け、飲酒は控えめにする。
・睡眠と休養を十分にとる。
・鎮痛薬などを使う際は、必ず医師や薬剤師に相談する。
・高齢者では、食欲低下や貧血が潰瘍のサインになることがあるため、異変を感じたら早めに受診する。
【まとめ】
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃酸の刺激と粘膜防御のバランスが崩れて起こる病気です。主な原因はピロリ菌と薬の影響であり、適切な治療で多くは治癒します。特に高齢者では症状が軽くても重症化する危険があるため、早めの受診と、再発予防のための定期的な内視鏡検査が大切です。