2025.06.16
相談員ブログ
経腸栄養の種類について
【経腸栄養とは】経腸栄養とは、口から十分に食事を摂取できない人に対して、消化管を通じて栄養を補給する方法です。
投与方法にはいくつかの種類があり、患者の病状や生活の質(QOL)を考慮して、適切な方法が選択されます。
・比較的短期間の栄養管理が必要な場合:経鼻経管栄養
・長期間の栄養管理が必要な場合:胃瘻
・胃の使用が困難な場合:腸瘻
なお、食道瘻(PTEG)という選択肢もあります。これは頸部から食道にチューブを挿入する方法であり、胃瘻の造設が困難な場合に代替手段として用いられます。
ただし、首は動きの多い部位であるため、チューブがずれたり抜けたりしやすく、感染や合併症のリスクもあります。そのため、適応は限定的であり、一般的に広く用いられているわけではありません。
以下では、経鼻経管栄養・胃瘻・腸瘻の各方法について比較しながら説明します。
【経鼻経管栄養(けいびけいかんえいよう)】
[適応する人とその理由]
・比較的短期間(2~4週間程度)の経腸栄養が必要な人
例:脳卒中後の嚥下障害、手術後の一時的な食事制限
理由: 迅速に導入でき、回復すれば中止が可能なため
・意識障害があり、経口摂取ができないが回復の見込みがある人
例:外傷性脳損傷、昏睡状態など
理由: 一時的な栄養補給法として適しているため
・胃瘻や腸瘻の造設を検討中で、判断材料が必要な人
例:高齢者や終末期患者で栄養管理の方針が未確定
理由: 胃瘻・腸瘻を行う前の試験的な栄養補給として活用可能
[メリット]
・手術が不要で導入が容易
・短期間の使用に適しており、開始・中止が柔軟に行える
・胃や腸が機能していれば、比較的安全に栄養投与が可能
[デメリット]
・長期使用には不向き(鼻や咽頭への刺激・負担あり)
・誤嚥性肺炎のリスクがある(胃の内容物が逆流を起こす可能性がある)
・外見上の違和感が大きく、QOLが低下しやすい
・鼻や喉の炎症、潰瘍が生じることがある
【胃瘻(PEG:経皮内視鏡的胃瘻造設術)】
[適応する人とその理由]
・嚥下障害があり、長期間の経腸栄養が必要な人
例:脳梗塞後の後遺症、パーキンソン病、ALSなど
理由:胃が機能していれば、長期間安定した栄養投与が可能なため
・経鼻経管栄養による不快感の軽減を希望する人
理由:鼻チューブの違和感がなくなり、快適性が向上するため
・胃の機能が保たれており、経腸栄養が可能な人
理由:胃を通して自然な消化・吸収が行える
[メリット]
・長期間の使用が可能で、在宅管理もしやすい
・経鼻経管栄養に比べて誤嚥リスクが低い
・チューブが目立たず、QOLの向上が期待できる
[デメリット]
・内視鏡による造設手術が必要
・逆流による誤嚥リスクは完全には排除できない
・胃の機能が著しく低下している場合はには適応外
・心理的抵抗を持つ患者や家族もいる
【腸瘻(PEJ:経皮内視鏡的空腸瘻造設術)】
[適応する人とその理由]
・胃の機能が低下している、または胃を切除した人
理由:胃を通さずに小腸へ直接栄養を送る必要があるため
・胃瘻では逆流が生じて誤嚥リスクが高い人
理由:小腸へ直接投与することで、逆流と誤嚥のリスクを軽減できる
[メリット]
・胃の機能障害や胃の切除後でも使用可能
・誤嚥性肺炎のリスクが比較的低い
・胃瘻と比べて逆流の頻度が少ない
[デメリット]
・手術が必要で、胃瘻よりも身体的負担が大きい
・小腸での消化吸収に時間がかかるため、下痢を起こしやすい
・栄養剤の選択や注入速度に慎重な管理が必要
・胃のように一時的に貯留する機能がないため、注入に時間を要する