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2023.09.06
相談員ブログ

夏なのに厚着をする高齢者がいるのはなぜ?

【夏に厚着をする高齢者がいる】
真夏の暑い最中にセーターや上着を何枚も着こんでいる高齢者を見かけることがあります。
「冷房が効きすぎなのかな?」と思い設定温度を上げ、「熱中症になってしまうから」と言っても、頑なに服を脱いでもらえないという経験をした介護者は少なからずいるのではないでしょうか。
理由はいくつかあるようです。

【厚着する身体的理由】
先ずは身体的な理由から。

・食事量の減少
高齢者は歯が悪くなったり、嚥下機能や消化機能が低下したりして食事量が減る傾向にあります。また、若い頃と比べると食欲も減退したりしています。
摂取カロリーが減少することで熱を作り出すためのエネルギーが減り、低栄養になることが寒がりの原因になると考えられます。

・筋肉量が減り、基礎代謝の低下
年を取ると筋肉量が減っていき、そのために基礎代謝も落ちて、体温が下がってしまいます。
筋肉には体内に熱を生み出す働きがあるので、筋肉の減少によって寒く感じていることがあります。

・皮膚の温度センサーの感度と体温調節機能の低下
人間は皮膚にある温度センサーで気温を感じ取り脳に伝達します。そして、血液や発汗の量を変えることによって体温を調節しているのです。けれども、加齢とともに温度センサーの感度が低下していくとともに、体温調節機能も低下していきます。
皮膚への血流は暑さとともに増加するのですが、この機能も高齢者は低下しています。つまり、熱を外に逃がしにくい状態にあるのです。
そして、皮膚に分布している汗腺の数も減少してきて、汗を分泌するタイミングが遅くなり、汗をかく量も減少してしまいます。介護をしていると、高齢者があまり汗をかかないことを見受けることがあります。

・心臓機能の低下
心臓の機能低下や高血圧の治療薬の服用も皮膚血流の流れを弱めてしまいます。
それらのことから、体温調整が低下すると暑さや寒さに対して感じにくくなってしまうのです。

・下肢静脈瘤
高齢者によく見られる下肢静脈瘤は、静脈の便が機能しなくなることで、血液が心臓に戻りにくくなる病気です。血液が下肢に停滞するために、足のむくみやだるさとともに冷えなどの症状も起こります。

【認知症の方の厚着について】
次に認知症の症状からくる理由を見てみましょう。

・自律神経の働きの鈍化
体温調節には脳の自律神経の働きが関与しています。自律神経の乱れが寒く感じる原因の一つと考えられます。
認知症を患うと自律神経の動きが鈍くなります。交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、自律神経の調整が上手くいかなくなることで、体温調節が低下して寒く感じてしまうことがあります。
特にレビー小体型認知症の方は自律神経に異常が起きやすいことが確認されています。

・見当識障害と判断力の低下
認知症の方は見当識障害や判断力の低下が起こりやすく、今の自分が置かれている状況が理解できなくなっていることがあります。季節に対する認識が薄れ、今が夏なのか冬なのか理解できないこともあります。そのために、真夏でも厚着してしまったり、暖房を入れたりする人が居るのです。
アルツハイマー型認知症の方は見当識障害により、季節や日付の認識や、周囲の人たちの服装と自分が違うという認識ができなくなる場合があります。

・精神的な不安
認知症の方で精神的な不安を感じている方も多くいますが、服を着こんで体を温めることで、不安を解消しようとすることがあります。つまり、服を着込むと安心感が得られるから厚着になるのです。

【厚着する高齢者への接し方】
そこで、介護する人にどのような対策をすべきか、まとめます。

・気温を確認できるように工夫する
エアコンの設定温度がそのまま室温と思わず、見やすい場所に大き目の温度計や湿度計を用意して、こまめに確認しましょう。暑さを可視化してご本人にも認識してもらうようにします。

・こまめな水分補給
脱水予防のためにこまめな水分補給を促しましょう。時間を決めて水分を取るのがおススメです。できれば塩分も摂取した方が望ましいので、スポーツドリンクや味の付いた飲み物に塩を溶かして混ぜるなどの工夫も必要です。寒さを訴えている場合は、温かいお茶や紅茶など提供するのも良いでしょう。

・エアコンは消さない
エアコンを嫌がられる高齢者は多いですが、なるべく消さずに風向や風量を変えるなどしてみましょう。あるいは扇風機やサーキュレーターを代用、併用したりと活用するのも一考です。

・プライドを傷つけない
熱中症の危険を感じて、無理にでも服を脱いでもらうように対応しがちです。しかし、ご本人のプライドを傷つけるような言動はしてはいけません。特に認知症の方の場合、不安から厚着をしている可能性もあるので配慮が必要です。入浴や着替える機会がある際など、タイミングを見計らってみましょう。
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