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2023.11.14
相談員ブログ

介護施設と身体拘束

【介護施設では身体拘束はできない】
認知症の方が病院に入院した際に、徘徊できないように胴体ベルトをされたり、経鼻経管栄養になってミトンといわれる指がわかれていない手袋状のものをはめられ、腕を縛られたりするのを見た人もおられるかと思います。
以前、老人ホームの入居相談時に、「病院では安全に対応するために身体拘束しているのだから、施設でもしないの?」という質問がありました。
一般病院では、身体拘束についての法令で定めたルールがないのですが、治療の妨げになったり、患者の安全が確保できない場合に身体拘束が行われています。
患者によっては理解力低下によって、医療機器を外してしまう方がいるからです。
医療行為を持続させないと、患者の生命に危険が及ぶと判断された場合に、拘束が実施されます。
一方介護施設では、平成12年4月から施行された介護保険法において身体拘束は原則禁止となっています。
しかし、介護施設も止む無く身体拘束が行われることもあるのですが、具体的にどのように対応されているのか深めていきましょう。

【身体拘束にあたること】
先ずはどのようなことを介護施設では身体拘束とみなしているかですが、「厚生労働省の身体拘束ゼロへの手引き」によれば、11の具体的な項目が示されています。
・徘徊しないように、四肢をひもなどで縛る
・転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひもなどで縛る
・自分で降りられないように、ベッドの四方を柵で囲む
・点滴などのチューブを抜かないように、四肢をひもなどで縛る
・点滴のチューブを抜かないように、指の動きを制限するミトン型の手袋を装着する
・車椅子などから立ち上がらないように、抑制帯(身体を固定する帯)を装着する
・立ち上がる能力のある人に、立ち上がりを妨げるような椅子を使用する
・おむつを勝手に脱がないように、つなぎ服を着せる
・他人への迷惑行為を防ぐために、四肢や体幹をひもなどで縛る
・気分を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に投与する
・自分の意思で開けられないような個室に閉じ込める
※引用:厚生労働省 「身体拘束ゼロへの手引き」

【介護施設でやむを得ず身体拘束をする場合】
介護施設でどうしても身体拘束をせざるを得ない場合、3つの原則を全て満たしているかが認められないといけません。
・切迫性
利用者本人、あるいは他の利用者等への生命または身体への危険度が著しく高いこと
・非代替性
身体拘束を行う以外に代替する介護方法がないこと
・一時性
身体拘束が一時的なものであること(期間として上限1か月)

さらに留意点として下記の点があげられています。
・「緊急時やむを得ない場合」の判断は、担当の職員個人またはチームで行うのではなく、施設全体で判断することが必要である。
・身体拘束の内容、目的、時間、期間など高齢者本人や家族に対し十分に説明し、理解を求めることが必要である。
・介護保険サービス提供者には、身体拘束に関する記載の作成が義務づけられている。
※引用:厚生労働省「身体拘束に対する考え方」

【身体拘束をしないようにする取り組み】
身体拘束を無くすために、厚生労働省が提言する5つの方針があります。
①トップが決意し、施設が一丸となって取り組む。
②みんなで議論し、共通の意識をもつ。
③まず身体拘束を必要としない状態の実現を目指す。
④事故の起きない環境を整備し、柔軟な応援態勢を確保する。
⑤常に代替的な方法を考え、身体拘束するケースは極めて限定的に考える。
そして、身体拘束せずに行うケアに取組む必要性があります。
①身体拘束を誘発する原因を探り、除去する。
②5つの基本ケアを徹底する(起きる、食べる、排泄する、清潔にする、活動する)。
③拘束廃止をきっかけに「よりよいケア」の実現を。
※引用 厚生労働省 「身体拘束ゼロへの手引き」 

数年前、私の母がある疾患を患い、急遽入院となりました。
鼻腔経管栄養となり、病はどんどん進行していきました。
ほどなく転院することになり、見舞いに行くと、手にはミトン、四肢拘束、胴体ベルトまでされていたのです。
私は慌てて担当ソーシャルワーカーに尋ねると、父の承諾の上で拘束を行っているとの返答でした。
父に聞くと「だって、安全を確保するために仕方ないと言われて…」とのこと。
その後もひと悶着あって療養病院に転院することになったのですが、その時は既に体動も無くなり、拘束も解かれていました。
その情景は今も脳裏から離れません。本人も定かでない意識ではあったものの、大変な苦痛であったことを想像します。
可能な限り、身体拘束は無くしてもらいたいものです。





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