1. 老人ホーム相談プラザトップ
  2. お知らせ
  3. 老人ホームを“施設”と呼ばない方がよい理由
2025.06.26
相談員ブログ

老人ホームを“施設”と呼ばない方がよい理由

【“施設”という呼び方について】
高齢者が暮らす場として、一般的に「老人ホーム」は“施設”と呼ばれることが多くあります。しかし近年、この表現を見直すべきだという声が増えています。
言葉は単なる名称ではなく、そこに込められた社会的意味や印象が、当事者の尊厳や社会からのまなざしに影響を与えるためです。
“施設”という言葉は、辞書では「特定の目的のために設けれらた建物や設備」と定義されています。学校、病院、図書館なども、広い意味では“施設”に含まれます。また、介護分野においても、「介護老人福祉施設」や「介護老人保健施設」といった制度上の名称に“施設”という言葉が用いられています。
したがって、“施設”という言葉そのものが誤りであるというわけではありません。しかし、日常会話や文章でこの言葉を使うことによって、高齢者の生活の場が「管理される場所」として受け止められてしまう可能性があります。

【“施設”と呼ぶことによる課題】
・暮らしの場としての認識が薄れる
老人ホームは、そこに住む方にとっては日常生活の場であり、自宅と同様に「暮らし」が営まれる場所です。しかし、“施設”という表現には、「生活が管理される場所」といった印象が強く、個々の生活の営みが見えにくくなってしまいます。
その結果、そこに暮らす人の「住まい」としての尊厳が、十分に意識されにくくなるおそれがあります。

・ネガティブなイメージの助長
「施設に入る」という表現には、「自宅では暮らせなくなった」「やむを得ない最終手段」といった否定的なニュアンスが含まれることがあります。
これは、本人や家族にとっても心理的な抵抗感や不安を生みやすく、老人ホームへの入居を「後ろ向きな選択」として受け取られる要因にもなります。

【代わりに使える表現について】
“施設”という言葉に代わって、一般の方にもわかりやすく、かつ生活感が伝わる表現を使うことが望まれます。以下は日常会話や文章でも取り入れやすい例です。

・ホーム
もっとも広く使われ、違和感が少ない表現です。英語の「home」は家庭に由来し、海外でも高齢者福祉の場を指す語として使われることがあります。

・老人ホームの名称
具体的な名称を用いることで、“施設”という抽象的で無機質な表現を避けられ、親しみやすさや個別性が伝わります。

・住まい
「住まい」は生活の場として自然な言い回しであり、家庭的なイメージを想起させます。介護保険制度においても「施設」ではなく「住まい」に近い環境づくりが求められています(厚生労働省「地域包括システム」参照)。

【言葉がもたらすイメージ】
言葉は、その対象に対する見方や関わり方に大きな影響を及ぼします。
「施設にいる人」と「ホームで暮らしている人」では、周囲が抱くイメージも大きく異なります。後者のほうが、より生活感や人間らしさが伝わりやすく、相手を尊重する気持ちにもつながります。
特に、医療・介護・行政の現場においては、用語の選び方ひとつで当事者の受け止め方や支援のあり方が変わることがあります。そのため、言葉の持つ意味を丁寧に扱う姿勢が求められます。
“施設”という言葉は、制度的には適切な場面もありますが、日常的な文脈では注意が必要です。高齢者が暮らす場所は、単なる建物ではなく、「生活の場」「人生の継続の場」であり、それにふさわしい言葉で表現されるべきです。
高齢社会が進む今こそ、一人ひとりの生活や尊厳を大切にする視点が重要です。言葉の選び方を通じて、そうした意識を広げていくことが求められています。
  1. 老人ホーム相談プラザトップ
  2. お知らせ
  3. 老人ホームを“施設”と呼ばない方がよい理由
お気軽に相談員にお尋ねください