2026.04.28
相談員ブログ
日本人は糖尿病になりやすいのか?体質と生活習慣から読み解く
【日本人は糖尿病になりやすいのか】「糖尿病は太った人の病気」と思われがちですが、日本人の場合はそう単純ではありません。実際、日本人は欧米人ほど肥満でなくても糖尿病を発症するケースが多く報告されています。
厚生労働省の調査によると、現在、日本で糖尿病の人や糖尿病予備軍を合わせると約2,000万人にのぼります。これは成人の約5~6人に1人に相当し、まさに国民病と呼べる規模です。特に高齢層ではその割合はさらに高まり、「太っていないから自分は大丈夫」という油断が禁物なのが、日本人の大きな特徴なのです。
【鍵となるのはアジア人共通の「インスリン分泌能力の低さ】
糖尿病の根本的な原因は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」が不足したり、十分に作用しなくなったりすることにあります。
実は、日本人を含むアジア人全般は、遺伝的にインスリンを分泌する能力(膵臓の機能)が欧米人の半分程度しかないと言われています。欧米人はインスリンの「予備能力」が高いため、多少太っても体が対応できます。しかし、アジア人はその分泌する力がもともと弱いため、わずかな体重増加や食生活の変化が血糖値の上昇を招きやすい体質といえます。
【背景にある「生存戦略」と節約遺伝子】
なぜアジア人はインスリンの分泌が控えめなのでしょうか。その理由は、過酷な環境を生き抜くための「生存戦略」にあります。
・低燃費なエンジン:食物繊維の多い伝統的な食事では血糖値がゆっくり上がるため、一度に大量のインスリンを出す必要がなく、膵臓は「小さなエンジン」として進化しました。
・効率的な貯蓄:繰り返される飢餓に備え、少ないエネルギーを効率よく脂肪として蓄えて生き延びる「節約遺伝子」が発達しました。
かつての環境では「最強の生存能力」だったこの省エネ体質が、現代の飽食・高カロリーな時代においては、皮肉にも糖尿病を招きやすい弱点となっているのです。
【やせ型でも糖尿病になる理由】
日本人がやせていても糖尿病になる背景には、外見からは見えない「内臓脂肪」と「筋肉量」が関係しています。
インスリンを安全に貯蔵できる「皮下脂肪」の許容量が少ない日本人は、余ったエネルギーがすぐに「内臓脂肪」として貯蓄されます。この内臓脂肪はインスリンの効果を妨げる物質を放出するため、少しお腹が出てきただけで血糖値が下がりにくくなることがあります。また、糖を消費する最大の場所である「筋肉」が少ないことも、血糖値の上昇に拍車をかける要因の一つです。
【食生活の変化が「エンジン」の負担に】
戦後、日本人の食事は劇的に変化しました。食物繊維が豊富な和食から、脂質や精製された糖質の多い洋食メニューへの移行です。
・白米、パン、麺類などの「白い炭水化物」への偏り
・清涼飲料水や甘い間食の習慣化
もともとインスリン分泌力が控えめな日本人の体にとって、現代の食習慣は「出力の小さいエンジンでアクセルを全開にしている」ようなもの。膵臓が徐々に疲弊してしまうのです。
【高齢者に多い理由と注意点】
加齢も糖尿病のリスクを押し上げます。年齢とともに膵臓の機能は低下し、インスリンの分泌が減少したり、効きが弱まったりするからです。
特に高齢者の場合、喉の渇きなどの自覚症状が出にくいうえに、食事量が減った際などに起きる「低血糖」にも注意が必要です。介護現場では「急に元気がない」「ぼーっとしている」といった変化が、実は血糖値の不安さからきていることも少なくありません。
【予防のポイントは「筋肉を維持して、ゆるやかに食べる」】
体質的なハンデはあっても生活習慣の工夫で予防・改善は可能です。
・「ベジファースト」でゆっくり食べる:野菜から先に食べて血糖値の急上昇を防ぎます。
・「お腹周り」と「筋肉」を意識する:体重の数字だけに一喜一憂せず、内臓脂肪の指標である「腹囲」をチェックし、タンパク質を摂って筋肉を落とさないようにしましょう。
・食後のこまめな運動:激しい運動でなくても、食後に少し歩くだけで糖の消費が促されます。
【まとめ:自分の「体質のクセ」を知ることが第一歩】
日本人が糖尿病になりやすい背景には、歴史の中で培われた「インスリンの節約」という体質があります。そこに現代の食生活や加齢が重なることで、リスクが顕在化するのです。
見た目だけでは判断できないこの特性を理解し、「太っていないから大丈夫」と思い込まずに、日々の生活を少しだけ整えてみる。自分の身体の傾向を知ることが、長く健康で自立した生活を送るための確かな備えとなります。