2026.05.18
相談員ブログ
「年のせい」と見逃さないために。高齢者に増える“見逃されやすい心不全”とは
「最近、少し動くだけで息が切れる」「足がむくみやすくなった」
「年齢のせいで体力が落ちたのだと思っていた」
こうした変化の中に、心不全が隠れていることがあります。心不全とは心臓のポンプとしての働きが弱くなり、体に必要な血液を十分に送り出しにくくなった状態を指します。
心不全というと、「突然倒れる」「心臓が止まる」といったイメージを持つかもしれません。しかし実際には、少しずつ進行し、本人も周囲も気づかないうちに悪化していくことが多い病気です。特に高齢者では、体力の低下や老化と区別しにくいため、見逃されやすいのが大きな問題です。
近年は高齢化に伴い、心不全の患者さんが急増しています。医療現場では、感染症のように爆発的に増える様子を指して「心不全パンデミック」という言葉が使われるほど、身近な危機となっているのです。
【心不全の正体と「水」の停滞】
心臓は、血液を吸い込んで送り出すことで全身を支えています。この力が落ちると、送り出せなかった血液が渋滞し、水分が体の中にたまってしまいます。その結果、息切れ、むくみ、だるさ、食欲の低下などが起こります。
意外かもしれませんが、「夜中に何度もトイレに起きる」のもサインの一つです。日中に足に溜まっていた水分が、夜寝て横になることで心臓に戻り、尿として排出されるためです。「最近、回数が増えたな」という変化には注意が必要です。
【動きは良いのに苦しい?新たなタイプ「HFpEF(ハフペフ)」】
最近、特に高齢者に増えているのが「HFpEF」と呼ばれるタイプの心不全です。
これは、心臓のポンプを押し出す力は一見正常に見えるのに、心臓の筋肉が「硬く」なってしまう状態です。ゴムボールが硬くなって膨らみにくくなるように、心臓が血液を十分に吸い込めなくなります。
このタイプは高齢の女性に多く、通常の検査では見落とされることもあります。心臓がしっかり動いているように見えても、実は心不全ということがあるのです。
【こんなサインを見逃さないで】
心不全は、単なる疲れとは違う「水たまり」のサインを出します。
・2~3日で2㎏ほど体重が増えた(脂肪ではなく水分がたまっています)
・階段がつらくなり、外出を控えるようになった
・横になると苦しいが、体を起こすと楽になる
・咳がなかなか止まらない
・靴下や靴が急にきつくなった
高齢者の場合、本人が「しんどい」と言わずに、ただ「なんとなく元気がない」「食事を残すようになった」という変化で現れることもあります。
【背景にある病気と治療の進捗】
心不全は、長年の生活習慣の積み重ねで起こります。特に関係が深いのは高血圧、糖尿病、腎臓病などです。「血圧が高いだけ」と思って放っておくことが、将来の心不全を招く大きな原因となります。
しかし、早く気づけばコントロールできる病気でもあります。最近では、もともと糖尿病の薬として開発されたものが、心不全の悪化を防ぐ画期的な「特効薬」として使われるようになるなど、治療の選択肢は大きく広がっています。
【「年のせい」と決めつけない】
高齢になると、疲れやすくなるのは自然なことです。ですが、「急に動けなくなった」「短い間に体重が増えた」といった変化は、体が発しているSOSかもしれません。
早めに医療機関へ相談することが、自分らしい生活を長く続けるための第一歩です。心不全を正しく知り、上手に付き合っていくことで、重症化を防ぎましょう。