2026.06.24
相談員ブログ
「推し」がいると、体も心も軽くなる。介護予防の新しいヒント
【「好き」が元気を支える意外な力】最近よく耳にする「推し活」という言葉。アイドルや俳優、スポーツ選手など、自分が応援したい「推し」を見つけて楽しむ活動のことです。「若い人の文化でしょ?」と感じる方も多いかもしれません。確かに、熱心にアイドルの動画をスマホで追う……といった姿を想像すると、少し遠い世界の話に思えますよね。
ですが、実は「推し活」の正体は、私たちが昔から大切にしてきた「誰かを想う気持ち」や「楽しみを待つ心」そのものです。最近それを新しい言葉で呼ぶようになっただけで、実は年齢に関係なく、私たちの心と体を元気にしてくれる素晴らしいパワーが秘められています。
【推し活は特別なものではない】
推し活というと、グッズを集めたりライブに遠出したりすることを思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし本来はもっと身近で幅広いものです。
好きな音楽を聴く、プロ野球や大相撲を応援する、将棋の対局を見守る。さらには「成長を楽しみにしているお孫さん」や「いつも親切にしてくれる近所のお店の店員さん、デイサービスの職員さん」だって、立派な推しになり得ます。大切なのは、形にとらわれず「心を動かされる好きなもの・人がいること」です。
高齢になると、仕事や子育てなど人生の大きな役割が一段落し、ふと楽しみや目標を見失ってしまうこともあります。そんなとき、心から応援できる推しの存在は、日常にパッと鮮やかな彩りを与えるきっかけになります。
【「ときめき」と「ワクワク」が脳と体を若返らせる】
高齢者の健康というと、どうしても運動や食事が注目されがちです。しかし、元気に暮らし続けるためには「心の活力」こそが最大の鍵となります。
「来月のコンサートが楽しみ」
「新しい作品が待ち遠しい」
「今年も応援に行きたい」
こうした期待感で胸がワクワクしているとき、私たちの脳内では「ドーパミン」という快感をもたらす物質が分泌されています。このドーパミンは別名「やる気ホルモン」とも呼ばれ、脳を活性化させ、集中力や記憶力を高める効果があります。つまり、「推しのことを考えてワクワクするだけで、脳のアンチエイジング(若返り)になっている」のです。
さらに、誰かにときめいたり、熱心に応援したりする心の動きは、自律神経のバランスを整え、免疫力を高めることまで分かっています。介護現場でも、自分の好きな推しの話題になると、それまで伏し目がちだった方がパッと顔を上げ、驚くほどいきいきとした表情で話し出す姿を目にすることがあります。
「恋をすると綺麗になる、若返る」とよく言いますが、これは推し活でも全く同じ。年齢に関わらず、心を動かしてワクワクするエネルギーは、細胞レベルで私たちを若返らせてくれる特効薬なのです。
【生きがいと健康の深い関係】
厚生労働省の健康づくり施策においても、高齢者の健康には「生きがい」や社会参加が重要であることが示されています。実際、さまざまな研究でも「趣味や生きがいを持っている人は、認知症や寝たきりになるリスクが低い」ということが分かってきています。健康寿命を延ばすためには、体を動かすことや栄養を摂ることと同じくらい、「生きる目的」を持つことが大切なのです。
推し活は、まさにこの生きがいのきっかけになります。
「推しに会うために元気でいたい」
「次のイベントまで健康でいたい」
このような前向きな目標は、生活に心地よい張りをもたらします。介護予防というと体操や筋力トレーニングのような「がんばるもの」を想像しがちですが、「楽しみがあるから元気でいたい」という自然な気持ちこそが、日々の行動を支える一番の原動力になります。
【外出や交流のきっかけにもなる】
高齢になると外出の機会が減り、人との交流も少なくなりがちです。しかし推し活を通じて、コンサートや観戦、イベント参加など、外へ出かける機会が自然と生まれます。
会場まで歩く、公共交通機関を利用する、人と会うといった行動は、意識しなくてもしっかりとした身体活動(運動)になります。「リハビリの体操は辛いけれど、推しのコンサートなら立ちっぱなしでペンライトを振っていられる」という方もいるほど、楽しみが持つ力は絶大です。
また、同じ推しを応援する人同士で交流が生まれることもあります。高齢者の孤立が課題とされる中、世代を超えて共通の話題で盛り上がれることは、社会的なつながりを維持するうえでもとても重要な役割を果たします。
【実は昔からあった「推し活」】
「推し活」という言葉自体は新しいものですが、その中身は昔から何も変わっていません。
昭和の時代にも、美空ひばりや石原裕次郎の熱心なファンが全国にいました。プロ野球や歌舞伎、宝塚などを一生懸命に応援する文化も、長く愛され続けています。人は昔から、誰かを熱心に応援し、その存在から元気をもらって生きてきました。現代の若い人たちと同じように、シニア世代もずっと前から魅力的な「推し活」をしてきたのです。
【まとめ】
高齢者の健康づくりには、運動や食事に加え、心が動く体験がとても重要です。推し活は外出や交流のきっかけになるだけでなく、「次が楽しみ」という前向きな明日を育む可能性を秘めています。
何歳になっても、人は好きなものに夢中になることができます。そのときめく気持ちは、生きる意欲や毎日のハリに直結していきます。これからの介護予防や健康づくりでは、「どんな運動をしていますか」だけでなく、「いま、どんな楽しみがありますか」という視点も、ますます大切になっていくのかもしれません。